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被害対処(クーリングオフ等)

以下、契約を解除したい場合等の対処法について記述する。

最初に

契約取消や損害賠償には時効があるので、注意が必要である。 とくに、クーリング・オフは、書面を受理してから八日を経過していないことが条件となり、取消可能期限が非常に短い。 だから、クーリング・オフする場合は、直ぐに動くこと。 法的にクーリング・オフが可能かどうかを調べる前に、まず、クーリング・オフを行なうことが先決である。 クーリング・オフを行なってから、法的にクーリング・オフが可能かどうかをじっくりと検討すれば良い。 何故なら、クーリング・オフは、期限内なら無条件に契約を取り消せ、損害賠償や違約金も一切発生しないからである。

クーリング・オフを含む解約通知は、必ず、内容証明郵便で送ること。 証拠が残らない手段を使っては、「聞いていない」「届いていない」「解約するとは書いてなかった」と言われた場合に水掛け論になる。 また、特定商取引法でクーリング・オフは「申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる」となっているので、口頭では法的効力が発生しない。

クーリング・オフを行なうだけなら国民生活センター消費生活センター)への相談で十分対処可能である。 ただし、消費生活センターでも間違った知識を教えている場合があるようなので、注意が必要である。 クーリング・オフ期限を過ぎてしまった場合は、必ず、弁護士等の法律家に依頼すること。 弁護士費用をケチって被害額を取り戻せなくなるのでは本末転倒である。

悪徳商法を相手にする時は法律家を通じて毅然とした態度で臨むのが良い。 「裁判は面倒だ」「弁護士費用を払いたくない」という本音を見せるとソコにつけ込まれるので、常に一貫して「損害を取り戻す為なら何でもやる」態度を示すことが重要である。 素人が悪徳商法と直接対峙すれば、必ずと言って良いほど、弱みを突かれる。 「裁判してもソチラが負けるだけですよ。多額の損害賠償が発生しますよ。」等の大嘘に対して、素人にはそれを見破るだけの知識がない。 そして、悪徳商法側の脅しに腰が引けて、穏便に済ませようと丸め込まれてしまう。 しかし、むしろ、裁判を回避したいのは悪徳商法を行なう側なのであり、穏便に済ませることは悪徳商法の思う壷なのである。 被害を取り戻したい、これ以上被害を拡大したくないと思うなら、悪徳商法の弱みを徹底的に突き、決して、こちらの弱みを見せるべきではない。 そのためにも、弁護士等の法律家に正式に依頼することが重要である。

特定商取引法第九条による取消(クーリング・オフ)

以下の条件を全て満たせば、クーリング・オフが可能である。

  • 特定商取引の訪問販売に該当すること(基本的に絵画商法は全て該当すると考えられる。後で詳細に記述)
  • 申込みの撤回等を行うことができる旨の書面を受領してから八日を経過していないこと(例えば、4月1日に受領していれば、8日まではできるが、9日からはできない。尚、8日中に撤回通知を発送すれば良く、その日に業者に届く必要は無い。)
    • ただし、妨害行為*1があった場合は、その後、クーリング・オフできる旨を記載した書面を改めて交付してから八日を経過するまではクーリング・オフが可能

クーリング・オフ書式は「クーリングオフ 書式」でGoogle検索でいろいろ出て来る。 契約年月日、商品名(契約件名)、価格、会社名等は、契約書に記載された通りに書くこと。 内容証明を出す時の注意点は次のとおり。

内容文書1通に謄本2通を添えて郵便窓口へお出しください。内容文書・謄本とも、用紙の大きさ、記載用具を問いませんから、市販の内容証明用紙以外の用紙を用いても、また、コピーにより作成してもかまいません。
謄本の字数・行数は1行20字(記号は、1個を1字とします。以下同じとします。)以内、1枚26行以内で作成していただきます。ただし、謄本を横書きで作成するときは、1行13字以内、1枚40行以内または1行26字以内、1枚20行以内で作成することができます。

カード・ローンの場合は、次項の割賦販売法第三十条の四による支払停止手続も行なうこと。 クーリング・オフしただけではローンの引き落としは停止しないので、信販会社に対しても「クーリング・オフしたので支払いを拒否する」旨を通知する必要がある。

クーリング・オフすると、次のとおりとなる。

  • 販売業者は、クーリング・オフに伴う損害賠償や違約金を請求できない
  • 商品の引取又は返還に要する費用は販売業者が負担する
  • 商品が使用済であっても、その対価は請求できない
  • 受領済の金銭は全額返還しなければならない
  • 特定商取引法第九条に反する申込者等に不利な特約は無効(例:契約書にクーリング・オフしない旨の文言があっても無効、契約書に損害賠償や違約金の記述があっても無効)

クーリング・オフ制度は特定商取引に関する法律に次のように書かれている。

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第九条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合'')においては、この限りでない。
2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等があつた場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者の負担とする。
5 販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは指定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利の行使により施設が利用され若しくは役務が提供され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
6 役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
7 役務提供契約又は指定権利の売買契約の申込者等は、その役務提供契約又は売買契約につき申込みの撤回等を行つた場合において、当該役務提供契約又は当該指定権利に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該指定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる。
8 前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

クーリング・オフ期限については、特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)第2節 訪問販売に詳しく解説されている。

ロ「から起算して8日を経過した場合」
この場合にはクーリング・オフができなくなるということであり、したがって、逆に、8日を経過するまではクーリング・オフをすることができ、あるいはまた第4条書面又は第5条書面を交付されなかったとき等は、クーリング・オフをする権利が留保されていることになる。
書面を受領した日を含む8日間が経過したときの意であるから、例えば、4月1日に法定書面を受領していれば、8日まではできるが、9日からはできない。

これによれば、「第4条書面又は第5条書面を交付されなかったとき等は、クーリング・オフをする権利が留保されている」(書面を受領するまではクーリング・オフの起算日が来ない)とされている。 また、妨害行為については、特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)第2節 訪問販売に詳しく解説されている。

ハ「申込者等が、...書面を受領した日から起算して8日を経過した場合」
平成16年改正によって導入された規定である。それ以前は、消費者がクーリングオフをしようとした際に、販売業者又は役務提供事業者が「これは特別な契約なのでクーリング・オフできない。」等と虚偽の説明をしたり威迫を行ったりして、消費者が誤認(第9条の3の解説1参照)・困惑(第6条の解説3参照)してクーリング・オフできなかった場合でも、第5条の書面(その日前に第4条の書面を受領した場合にあっては、その書面)を受領した日から8日を経過したときは、クーリング・オフをすることができなくなってしまう状況にあった。
消費者からのクーリング・オフを妨害するため、事業者が虚偽の説明を行ったり威迫して困惑させたりする行為は、罰則をもって禁止しており、このような違法行為を受けてクーリング・オフできなくなった消費者が救済されないのは妥当でない。
したがって、このような事業者の違法行為を受けて消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフしなかった場合には、その消費者は、法定書面を受領した日から起算して8日を経過した場合(上記イ及びロ参照)であっても、いつでもクーリング・オフできることとした。 ただし、法律関係の安定性の確保にも配慮して、その事業者がクーリング・オフできる旨を記載した書面を改めて交付し、それから8日を経過すると、その消費者は、クーリング・オフをすることができなくなることとした。

適用対象となる訪問販売の定義については、特定商取引に関する法律に定められている。

第二章 訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売 第一節 定義
(定義)
第二条 この章及び第五十八条の四第一項において「訪問販売」とは、次に掲げるものをいう。
一 販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供
二 販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供

「自ら来店すれば訪問販売ではなく、クーリング・オフはできない」とする独自見解を流布する者も居るが、これは明らかな間違いである。 特定商取引法では、自ら来店した場合であっても政令(特定商取引に関する法律施行令)で定める方法により誘引した者と売買契約を締結して行う商品販売は訪問販売であると定義されており、クーリング・オフの対象となる。

(特定顧客の誘引方法)
第一条 特定商取引に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項第二号の政令で定める方法は、次のいずれかに該当する方法とする。
一 電話、郵便、民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは法第十二条の三第一項に規定する電磁的方法(以下「電磁的方法」という。)*2により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し若しくは拡声器で住居の外から呼び掛けることにより、又は住居を訪問して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること。
二 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、又は住居を訪問して、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、営業所その他特定の場所への来訪を要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあつた者に対して要請する場合を除く。)。

以上のとおり、各種広告手段で販売目的を告げずに営業所等へ来訪を要請すれば訪問販売に該当する。 「販売目的を告げずに」の意味は、特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)第2章訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売第1節定義に解説されている。

[1]は、業者が販売意図を明らかにしないで消費者を呼び出す場合について規定したものである。例えば、「あなたは選ばれたので○○を取りに来てください」と告げる場合や、本来の販売の目的たる商品等以外のものを告げて呼び出す場合が本号に該当することになる。なお、勧誘の対象となる商品等について、自らそれを扱う販売業者等であることを告げたからといって、必ずしも当該商品について勧誘する意図を告げたものと解されるわけではない。例えば、こうした場合であっても、「見るだけでいいから。」と告げるなど販売意図を否定しているときや、着物の着付け教室と同会場で着物の即売会が行われる場合において、実際には着物を購入しなければ講習自体も受けられないにもかかわらず、着付け教室のみの参加が可能であるように表示するなどしているときには、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。また、パーティーや食事会等への招待のように告げながら、パンフレット等に消費者の目に留まらないような小さい文字で「新作商品をお勧めする即売会があります。」と記載するなど、実質的に販売する意図が示されているとは言えない場合は、当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない。なお、ビラ、パンフレット及び拡声器については、「商品を無料で配布する」等告げて行ういわゆるSF商法として行われるものを念頭においたものである。

以上のとおり、ビラ、パンフレット等に消費者の目に留まらないような小さい文字で記載されていても、実質的に販売する意図が示されているとは言えず「当該商品について勧誘する意図を告げたことにはならない」とされている。

割賦販売法第三十条の四による支払停止(支払停止の抗弁権)

他の手続は全て販売業者を相手取って行なうが、これは信販会社に対して行なう手続である。 販売業者に対して金銭の支払いを拒否する理由がある場合は、包括信用購入あつせん(クレジット・カードでのローン)においても、信販会社に対して支払いを拒否することができる。 ただし、支払総額が4万円以上(リボルビング方式は3万8千円以上)でなければならない。

詳細は割賦販売法に書かれてある。

(包括信用購入あつせん業者に対する抗弁)
第三十条の四 購入者又は役務の提供を受ける者は、第二条第三項第一号に規定する包括信用購入あつせんに係る購入又は受領の方法により購入した商品若しくは指定権利又は受領する役務に係る第三十条の二の三第一項第二号の支払分の支払の請求を受けたときは、当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。
2 前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。
3 第一項の規定による対抗をする購入者又は役務の提供を受ける者は、その対抗を受けた包括信用購入あつせん業者からその対抗に係る同項の事由の内容を記載した書面の提出を求められたときは、その書面を提出するよう努めなければならない。
4 前三項の規定は、第一項の支払分の支払であつて政令で定める金額に満たない支払総額に係るものについては、適用しない。

「政令で定める金額」については、割賦販売法施行令に定められている。

(ローン提供業者に対する抗弁)
第十八条 法第二十九条の四第二項 において準用する法第三十条の四第四項 の政令で定める金額は、四万円とする。
2 法第二十九条の四第三項において準用する法第三十条の五第一項において準用する法第二十九条の四第二項において準用する法第三十条の四第四項の政令で定める金額は、三万八千円とする。

特定商取引法第九条の三による取消(不実行為による取消)

特定商取引法第六条に定める重要事項について「不実のことを告げる行為」「故意に事実を告げない行為」があった場合は、特定商取引法第九条の三により契約の取消ができる。 特定商取引法第九条の三による取消は、次のいずれか早い方で時効となる。

  • 「不実のことを告げる行為」「故意に事実を告げない行為」を知ってから6ヶ月
  • 契約締結から5年

特定商取引第九条の三による取消は、特定商取引に関する法律に次のように書かれている。

(訪問販売における契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第九条の三 申込者等は、販売業者又は役務提供事業者が訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し次の各号に掲げる行為をしたことにより、当該各号に定める誤認をし、それによつて当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる
一 第六条第一項の規定に違反して不実のことを告げる行為 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 第六条第二項の規定に違反して故意に事実を告げない行為 当該事実が存在しないとの誤認
2 前項の規定による訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
3 第一項の規定は、同項に規定する訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
4 第一項の規定による取消権は、追認をすることができる時から六月間行わないときは、時効によつて消滅する。当該売買契約又は当該役務提供契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。

対象となる重要事項については、次のように書かれている。

(禁止行為)
第六条  販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第九条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第三項又は第四項の規定の適用がある場合にあつては、同条第三項又は第四項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない

その詳細は特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)第2節 訪問販売に解説されている。

(4) 「不実のことを告げる行為をしてはならない。」 「不実のことを告げる行為」とは、虚偽の説明を行うこと、すなわち事実と異なることを告げる行為のことである。事実と異なることを告げていることにつき主観的認 識を有している必要はなく、告げている内容が客観的に事実と異なっていることで足りる。相手方が錯誤に陥り、契約を締結し又は解除を行わなかったことは必要としない。本項の違反行為が詐欺罪の要件にも該当する場合に、両罪の観念的競合となる。
なお、刑事罰との関係では、刑法総則の適用により、不実の告知が故意になされた場合について処罰されることになる。他方、本項の違反は主務大臣の指示(第7条) 及び業務停止命令(第8条)といった行政措置の対象行為ともなっているところであ るが、上記の通り、不実の告知に対する主務大臣の指示、命令は、過失によりなされた場合であっても第7条、第8条の要件を満たせば行い得る
また、契約締結段階で告げている内容が実現するか否かを見とおすことが不可能な 場合であっても、告げている内容が客観的に事実と異なっていると評価できる限り不実の告知に該当する。(絵画のアポイントメントセールスにおいて、「近いうちにこの絵は必ず高騰して儲かります。」などと告げる場合。)


(3) 「故意に事実を告げない行為」
ここでいう「故意」とは、「当該事実が当該購入者等の不利益となるものであることを知っており」、かつ、「当該購入者等が当該事実を認識していないことを知っていること」をいう。「故意に事実を告げない行為」をもって足り、相手方が錯誤に陥り、契約を締結し又は解除を行わなかったことは必要としない。本項の違反行為が詐欺罪の要件にも該当する場合に、両罪の観念的競合となる。

これによれば、ボッタクリ(当該購入者等の不利益となる)を知っていて、かつ、ボッタクリの事実を客が知らない場合に、ボッタクリである事実を告げないことは 「商品の品質」や「商品の販売価格」について「故意に事実を告げない行為」に該当する。

特定商取引法第六十条による申出

消費者庁長官・経済産業局長・都道府県知事に特定商取引の公正及び購入者等の利益が害されるおそれがあることを申し出て、適当な措置をとるよう求める制度がある。 詳細は特定商取引法の申出制度のページを参照のこと。

消費者契約法第四条による取消

次のような場合、消費者契約法第四条により契約の取消ができる。

  • 重要事項について事実と異なることや不確実な事項の断定的判断を告げる
  • 重要事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該消費者の不利益となる事実を故意に告げない
  • 軟禁等

「重要事項」については、次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」と広く定義されている。

  • 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
  • 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

消費者契約法に次のように書かれている。

第二章 消費者契約
 第一節 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。


(取消権の行使期間等)
第七条  第四条第一項から第三項までの規定による取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。

また、これらの法律を逃れるような契約条項は無効とされている。

 第二節 消費者契約の条項の無効
(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項
四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項
五 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
2 前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。
一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

民法第五条第二項による取消(未成年者契約の取消)

民法で次のように定められている。

(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。


(取消権の期間の制限)
第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とす

民法第九十六条による取消(詐欺・脅迫による取消)

民法で次のように定められている。

(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。


(取消権の期間の制限)
第百二十六条 取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

民法第七百九条による損害賠償(不法行為に対する損害賠償)

民法で次のように定められている。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

Wikipedia:不法行為によれば、一般不法行為の成立要件は次のとおり。

  • 故意・過失
  • 権利侵害(違法性の存在)
  • 損害の発生
  • 侵害行為と損害発生との間に因果関係があること
  • 責任能力
  • 違法性阻却事由(違法性が正当化される理由)がないこと

故意・過失で違法行為を行なって損害を発生させれば、一般不法行為が成立する。 違法行為の例としては、たとえば、特定商取引に関する法律の次のような行為が該当する。

(契約を締結しない旨の意思を表示した者に対する勧誘の禁止等)
第三条の二 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その相手方に対し、勧誘を受ける意思があることを確認するよう努めなければならない
2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない


(禁止行為)
第六条 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
一 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第九条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第三項又は第四項の規定の適用がある場合にあつては、同条第三項又は第四項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、前項第一号から第五号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。
3  販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約を締結させ、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない
4 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所等以外の場所において呼び止めて同行させることその他政令で定める方法により誘引した者に対し、公衆の出入りする場所以外の場所において、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない

「その他政令で定める方法」については、クーリング・オフの項目で解説したとおり。 「公衆の出入りする場所以外の場所」については、特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)第2節 訪問販売に詳しく解説されている。

(2) 「公衆の出入りする場所以外の場所において」
不特定多数の一般人が自由に出入りしていない場所において、の意味である。個々のケースにおいては実態に即して判断されることとなるが、例えば、事業者の事務所、個人の住居、ホテルの部屋や会議室、公共施設等の会議室、カラオケボックス、貸し切り状態の飲食店等は該当するものと考えられる。
(3) 「当該売買契約......の締結について勧誘してはならない。」
上記及びの要件を共に満たす状況において勧誘をすること、すなわち本項で規定する方法により誘引した者に対して、公衆の出入りしない場所で勧誘をすることは、すべからく本項に違反する行為となる。例えば、誘引した者に対し、公衆の出入りする 場所で勧誘を始め、その後公衆の出入りしない場所で勧誘を行った場合でも、本項に 違反する行為となる。
公衆の出入りしない場所において勧誘を開始した時点で、本項に違反する行為となり、罰則及び行政処分の対象となる。

絵画商法では、別室に連れ込んだ時点で違法行為となる。 その他、景品表示法違反のおとり広告や二重価格も違法行為となる。 予想来場者数の半数未満の記念品しか用意していないのに、数量限定のみの記載ならば違法行為が成立する。 また、業者が自ら設定した価格を希望小売価格として比較対照価格に用いることは、違法な二重価格表示となる。 たとえば、値札に25万円と書いてあるのに、20万円に値下げすると言ったら、その時点で違法行為が成立する。 そうした違法行為で損害が発生(高価な絵画を購入させられる等)すれば、損害賠償請求権が発生する。

*1 「この商品はクーリング・オフ対象外です」等の虚偽の説明、威迫して困惑させたりする行為等

*2 電子メール広告